特に時間がかかる計算では、計算経過をモニターすることが重要です。例えば6時間要する構造最適化計算で、3時間の時点ですでに目的の構造と異なる収束傾向がみられた場合、そのまま計算を続ける行為は計算資源の無駄です。
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そんな際に役立つのが、無償で利用できるGaussSumというソフトです。SCFや構造最適化の収束状況をグラフィカルにモニタリングすることが可能です。既にMaSKを導入している方は、計算経過のモニターもできるので必要性は低いかもしれません。しかし、MaSKにはない機能も備えているので本記事を読んで導入するか検討してみてください。
 

1) GaussSumてどんなソフト?

GaussSumは、Firefly(PC GAMESS), GAMESS(US), Gaussianなどの出力ファイルを分析して情報を抽出して種々の計算ができるGUIアプリケーションです。動作はWindowsのみですが、EasyWineを導入することでMacでも同様に動作可能です。
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分子構造自体を表示できないのが非常に残念ですが、その反面動作が軽量なのが特徴です。主な機能としては、SCFや構造最適化の進行状況UV-Vis / IR /ラマンスペクトルMOレベルMO寄与に関する情報を抽出することができます。 以前紹介したMaSKでは最適化状況を分子構造を表示させながら確認することはできますが、SCFの進行状況は表示できませんし、IRとUVスペクトルの表示もできないので相補的に利用すると良いと思います。

2)具体的な使い方は?

ダウンロートはWebページにアクセスして下図の画面①「Install」をクリックすると画面②に移動し、赤丸で囲った「here」をクリックするとダウンロードが開始されます。後は、インストーラーの指示に従ってインストールすればOKです。
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難しい操作は一切ありません。詳しい操作はWebページに記載されているので、ここではよく使う機能に絞って説明します。計算途中の出力ファイルを開く場合は、一応ファイルを複製して別のフォルダに移動したものを使用したほうが良いでしょう。ツールバーのFile >Openから出力ファイルを開きます。一々量子化学計算パッケージの種類を指定しなくてもソフト側で判別してくれます。ここでは、Firefly(PC GAMESS)で計算したOutputファイル(.out)を用いて説明します。


■ SCF計算の進捗状況
Moniter SCF(赤枠①)を選択して、右側のアイコンボタン
(赤枠②)をクリックするとSCF計算の進捗状況が折れ線グラフで表示されます。徐々にエネルギーが下がっている様子がわかります。フロッピーディスクマークで画像の保存ができます。
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■ 構造最適化の進捗状況
Moniter GeoOpt(赤枠①)を選択して、右側のアイコンボタン(赤枠②)をクリックすると構造最適化計算の進捗状況が折れ線グラフで表示されます。もちろん、SCF計算が終了していない場合はここで進捗状況の確認はできませんので、表示できない場合はまだ構造最適化計算を開始していないことがわかります。

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グラフを見て徐々にエネルギーが降下していれば良いのですが、途中でエネルギーが跳ね上がっている場合は目的と異なる構造に収束していないか特に注意が必要です。計算中であれば、分子構造をMacMolPltMaSKで表示させて、あきらかにおかしな構造に収束しているようであれば計算を途中で終了させ、初期構造や計算方法を見直す必要があります。

■ 文字列の抽出
実際の値を確認したい場合は、Search file(赤枠①)からCustom(赤枠②)の欄に検索する文字列を入力すると出力ファイルからその文字列を含む行を抽出してくれます。 例えば以前、構造最適化の際に説明した「MAXIMUM GRADIENT」と入力しアイコンボタンをクリックすると、以下のように文字列が抽出されエネルギーの収束状況が確認できます。

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Outputファイル中で、取り出したい数値が各行に分かれて存在する場合は非常に便利な機能です。

■ IRスペクトルの表示
Frequencies(赤枠①)を選択すると、IRおよびラマン振動に関する情報を抽出できます。スケーリングファクタを使用してスケーリングすることができます。 

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以前、「IRスペクトルを計算してみよう」で紹介したようにスケールファクターは、計算に使用した理論(計算手法)/基底関数で値が異なります。設定は、Scaling factorsの値を変更するだけです(デフォルトでは1.00)。 結果は、画像の他に数値としてtxtファイルに書き出すこともできます。 Macでは、MoCalc2012を使用できないのでIRスペクトルを表示させたい場合は、GaussSumを導入することをおすすめします。

■ UV-Visスペクトルの表示
Electronic transitions(赤枠①)を選択すると、UV-Visに関する情報を抽出できます。Start~End(nm)で表示させるレンジを調節して右側のアイコンボタンをクリックするとスペクトルが表示されます。
 

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もちろん、UV-Visスペクトルを計算した場合のみ表示可能です。
計算方法については、こちらの記事を参照してください。

3) おわりに

今回は、GaussSumという多数の量子化学計算パッケージに対応した出力ファイルの確認用ソフトを紹介しました。ある程度計算の実行に慣れてきたら、計算途中の進行状況にも気を配る癖をつけて作業の効率化を図りましょう。 GaussSumの「文字列の抽出機能」は、初心者のうちはまだ利用用途が思い浮かばないかもしれませんが、今後色々な課題をこなす中で多用することにりますので、こういう機能があることだけでも覚えておくと良いでしょう。

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