それでは早速、量子化学計算(計算化学)の世界を『体験』してみましょう。ここでは、MoCalc2012を通してFirefly(PC GAMESS)の基本操作を体験を通して学んでいきます。MoCalc2012の画面の配置や構成について知っておくと、あとの作業効率が上がります。
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まず、おおまかな流れは以下の通りです。
1)  MolViewで計算する分子構造(今回は水分子)を描いて、MOLファイル形式で保存する。
2)  MOLファイルをMoCalc2012に読み込み、量子化学計算に必要な設定を行い、計算を開始する。
3)  計算が正常に終了したか確認する。

それでは、肩の力をぬいて気軽にはじめていきましょう。

1) 構造ファイルを作ろう

水分子のMOLファイルの保存方法については、前回の記事を参照してください。MolViewからダウンロードしたファイルは、ファイル名『MolView.mol』で保存されているはずです。また、他の化学構造の描写ソフトをお使いの方は、水分子(H2O)を描いてMOLファイル形式(拡張子が.mol)で保存します。
 

2) 計算化学に必要な設定をしよう

1) MoCalc2012を起動し、起動画面(メイン画面)の「FIREFLY」ボタンを押します(FireflyとMoCalc2012の連携を行ってない場合はここを参考に設定をしてください。)
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2) Firfly用の設定画面が表示されます。「Start」ボタンを押して「Open Structure File ...」から、最初に作成した水分子の構造ファイル「MolView.mol」を開きます。ちなみに、設定画面へファイルをドラックアンドロップしても開けます。ファイルを開くとの「JobName: 」の所にファイル名「MolView」が表示されます。
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3) 青枠(点線)で量子化学計算に必要な“計算方法”を指定します。はじめて量子化学計算を行う方は、”この設定画面でさっぱり何をしていいか分からない”と混乱してしまうかもしれません。そんな場合はとりあえず、何もさわらずにそのまま次の項に進んで⑮の「Run Firefly!」ボタンを押して計算を開始してOKです。

それでは、各ボタンについて簡単に説明していきます。専門用語が出てきますが、わからない方はとりあえず「量子化学計算をやる前にはこんな感じの情報が必要なんだな~」程度でOKです

【Description】(説明)
メモを残したい場合ここに書きます(e.g.計算した化合物名など)。

【Charge】(電荷)
計算する化合物の電荷を指定します。今回は中性の水分子なので0でOKです。(e.g.一価の陽イオン+1なら『1』、陰イオン-1なら『-1』と書きます。(※分子全体の総電荷を指定する必要があります。一価の陽イオンと陰イオンが混在する場合は(+1+(-1)=0)で『0』と指定します。)

【Spin State】(スピン多重度)
スピン多重度を指定します。”スピン多重度て何?”て方には、すこし説明が必要なのでここを参照してください。今回はSinglet(1)のままでOKです。

【Job Type】(ジョブタイプ)
どんな計算を行うか指定します。ここでは『Geometry Optimization(構造最適化)』のままでOKです。構造最適化計算とは、簡単に言うと分子の結合角や、結合長を含めた安定な構造を求める計算のことです。この計算結果から、分子の色々な情報がわかります。

【Check Only】(チェックオンリー)
ここに✓を入れると完全な計算は行わず、指定した“計算方法”に誤りがないか確認してくれます。計算に長時間を要する場合などは、始めに【Check Only】で確認しておくと良いでしょう。今回は指定しません。

【Wavefunction】(電子配置)
電子配置(基底配置))を指定します(e.g. RHF(1つの分子軌道に異なるスピンの電子2つ(閉殻系分子))、UHF(α電子とβ電子を別々の軌道に有する(開殻系分子))。今回計算する水分子は閉殻系なので『RHF』のままでOKです。初心者の方には、すこし説明が必要なので、詳細はここを参照してください。

【MP-Peretubation】(メラー・プレセット摂動法)
第一原理計算手法の一つであるメラー・プレセット法の指定を行います(e.g. 摂動のレベルによりMP2~4で指定します)。メラー・プレセット法はよく使われる計算手法なので、今後詳しく説明します。今回は0のまま(指定しない)でOKです。

【Method】(メソッド(基底関数))
基底関数の指定を行います。⑨と⑪は計算の”理論”を指定し、⑩で”基底関数”を指定します。この”理論”と”基底関数”の選択が、後々重要になってくるので覚えておいてください。今回は『3-21G』という基底関数を使用します。HF/3-21Gの理論/基底関数についてもう少し知りたい方は、ここを参照してください。

【DFT-Type】(DFTタイプ)
密度汎関数法の指定を行います。ひょっとしたら初学者の方でも『DFT計算』や『B3LYP』なんて言葉を耳にしたことがあるかもしれません。今回、この方法は使用しませんがMP法同様よく使われる計算手法なので、今後詳しく説明していきます。今回は、『NONE』のままでOKです。DFT計算についてもう少し知りたい方はここを参照してください。

【Solvent】(溶媒)
計算に溶媒効果を取入れたいときに指定します。Firefly(PC GAMESS)では、デフォルトで17種類の溶媒が使用可能です。リストにない溶媒も擬似的に計算に取り入れることが可能ですので、後々詳しく紹介していきます。ここでは『None』、つまり気相中の計算を指定します。

【Keyword】(キーワード)
設定画面にない設定項目をここで指定します。直接書き込むことも可能ですが、①『Start』の横のボタンの『Option』→『Presets』で設定を行うと、毎回キーワードを書き込む手間が省けます。常用するキーワードがあればここで指定しておくと良いでしょう。今回は何も書き込む必要はありません。初期設定のままでOKです。

【Exit】(終了)
アプリケーションを終了させます。計算途中にボタンを押すと、“”計算を停止させますか?”というダイアログが表示されますので、計算を終了したい場合はOKを押して終了させてください。

【Status】(ステータス)
現在の状態が表示されます。

■ 計算前は『Open Structure file for input! (意訳:入力用の構造ファイルを開いてね!)』

■ 構造ファイルを読み込むと『Here we go!(意訳:いくぜ!)』

■ 計算中は『GAMESS/Firefly-calculation for MolView has started Please wait... (意訳:計算が開始されたよ、もうすこし待ってね...)』

■ 計算終了後は『GAMESS/Firefly-calculation successfully terminated. Have fun! (意訳:計算が正常に終了したよ。 楽しんでね!)』

計算が異常終了した場合などもここに表示されるので、常にステータス表示に注意する習慣をつけると良いでしょう。

【<--Main Sdreen】(メインスクリーン)
起動画面(メイン画面)に戻ります。
 

3) 計算を開始してみよう

1) の「Run Firefly!」ボタンを押して計算を開始します。

2) のステータス表示が「GAMESS/Firefly-calculation for MolView has started Please wait...」から「GAMESS/Firefly-calculation successfully terminated. Have fun!」に変われば、無事に計算が終了したことになります(PCの性能に因りますが水分子であれば数秒~数十秒で終了すると思います)。

3) 最後に構造ファルの「MolView.mol」と同じディレクトリに、4つの新しいファイルが作成されたことを確認しておいてください。
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おわりに

以上、はじめての『量子化学計算体験』はいかがでしたか? 意外に簡単だったでしょう?これで「水分子のHF/3-21Gレベルの構造最適化」の計算が行えました。もちろん、これで全てが終わったわけではありません。計算そのものよりも、結果を解析することこそが計算化学の醍醐味です。次回は、ここで計算した結果についてグラフィカルに表示させてみましょう。
”まだ、何をやっているのかわからない..."という方も安心してください。これから優しく解説していきます。


【関連記事】
Firefly(PC GAMESS)を起動して、計算してみよう ~その②~