前回、外部ファイルからcc-pVDZという基底関数を使ってMP2レベルの構造最適化計算を行いました。その際に新たに出てきた「cc-pVDZ」や、これを使う際に追加したキーワードは一体何を意味しているのでしょうか?今回は、cc-pVXZシリーズに関して簡単な説明と使用上の注意点について紹介します。
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cc-pVXZとは?

Dunningらのcc-pVXZ(correlation constant基底(「cc」は「相関が一貫している」ことを意味します))は、ポストハートリーフォック法用に設計された電子相関効果を効率的に取り込める基底関数です。

前回用いたcc-pVDZのX=Dは2倍分極基底(split valenceに分極関数を加えた基底, "cc-p"のpは polarized(分極)の略)を表します。精度は6-31G(d,p)と同等といったところです。X=T(3つ)のように数が増えると、valence関数と高い基底関数量が増えるので計算コストが大きくなります。ちなみに、cc-pVTZは
一般的に6-311G(d,p)よりややよい結果を与えます。

ただし、cc-pVXZはab initio法の収束は非常に遅いので注意が必要です。さらに詳しく知りたい方は、以前紹介したBSEから参考文献を確認してみると良いでしょう。


cc-pVXZの使用上の注意点は?

cc-pVXZシリーズは、軌道核運動量が大きい基底にはデカルト関数ではなく球面調和関数を用い、内殻軌道の相関を取り込まないことが推奨されています(内殻軌道の相関を取り入れたい場合は、cc-ppCVXZシリーズが推奨されています)。

前回の記事Firefly(PC GAMESS)に追加したキーワードは、これらを指定しています。追加したキーワードはそれぞれ以下の通りです。この基底関数と併せて使用しないと、エネルギーの不一致やSCF収束の不良といった原因になるので注意しましょう。

d5=.t. :d,f等の軌道(5d,5f等)の球面調和関数を使用するフラグです。
NCORE=1 :最初のn個の占有軌道(内殻軌道)の計算を省略するフラグです。今回は水分子なので1を指定しています。
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なお、GAMESS(US)ではこれらのキーワードが異なるので注意が必要です。以下に、Fireflyとの比較を示します。
Firefy:NCORE  GAMESS(US):NACORE
Firefy:d5=.t.  GAMESS(US):ISPHER=1

また、GAMESS(US)にはcc-pVXZがデフォルトで使用できるので外部から基底系を読み込む必要はありません。キーワードは以下の通りです($BASISグループで指定します)。
cc-pVDZGBASIS=CCD
aug-pVDZGBASIS=ACCD
cc-pVTZGBASIS=CCT
※ cc-pVXZにDiffuse関数を加えた場合は、aug-をccの前に記載します。


他の基底系でも球面調和関数は必要?

デカルト関数または球面調和関数を使用するかは、使用する基底系がどのように設計されたかに依存します。一般的に、古いタイプの基底系はデカルト関数を使うように設計されていますが、比較的新しい基底系には球形のd型関数とともに使用することが推奨されています。
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球面調和関数を使用することが推奨される代表的な基底系をいくつか列挙します。
・ Dunningのcc-pVXZシリーズ及びそれから派生した基底関数
・ AhlrichsのSV, TZV, QZV及びそれから派生した基底関数 (def3-TZVPPDなど)
・ Jensenのpc-Xシリーズ及びこれから派生した基底関数 (aug-pc-2やpcS-2など)
・ Roosの拡張DZとTZ ANO,ANO-RCC基底関数
・ Sapporo基底関数 (SPK-nZPなど)


おわりに

今回は、前回の記事で紹介したcc-pVXZ系の基底関数について紹介しました。cc-pVXZシリーズに限らず、はじめて使う基底関数については、その基底系がどのように設計されているかや使い方について十分理解を深めて利用するようにしましょう。

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