計算結果を視覚的に表す方法として、エネルギーダイアグラムは非常に便利です。エネルギー図を作成するのに一番適しているのは、Excelなどの表計算ソフトでしょう。しかし、計算毎に図を作成するのは面倒だったりします。
そこで今回は、計算化学に必須のエネルギーダイアグラムを簡単に作成する方法について紹介します。
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エネルギーダイアグラムて何?

エネルギーダイアグラムは、縦軸にエネルギー値(自由エネルギーやポテンシャルエネルギーなど)、横軸に反応座標や結合距離などを示し、エネルギー変化を分かり易く図示したものです。

例えば計算化学の分野では、一つの反応で幾つかの反応機構が考えられる場合など、エネルギー的にどちらが優位かを図示する際によく用いられます。これと言った書き方の制限はなく、とにかく分かりやすいシンプルなものが好まれる傾向にあります。JCTCなどを覗いてみると良いでしょう。色々なエネルギーダイアグラム図や準位図などの書き方のアイディアが溢れています。


グラフ描画はExcelが唯一の選択肢?

エネルギーダイアグラムを描画する専用のフリーソフトは残念ながら存在しません。自分好みに色々とカスタマイズできる点ではExcelなどの表計算ソフトを使うのが一番です。Excelをお持ちでない場合は、無料のOpenOfficeやMacであればNumbers、Google スプレッドシートでももちろんOKです。
一番単純なのは、下図のような表計算ソフトに標準で使用できる図形を組合せる方法です。
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さらに細かくこだわりたい場合は、セルサイズを方眼紙状にしても良いでしょう。
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幾つかのバリエーションを含んだExcelファイルを記事の一番下に置いておきます。

表計算ソフト以外の方法としては、Pythonなどのプログラミング言語を使用して自作する手があります。Pythonを既に使える方は、以下のページを参考にしてみてください。
https://chemistry.stackexchange.com/questions/43484/creating-energy-profile-diagrams-for-publication
https://eutactic.wordpress.com/2014/01/21/nice-energy-level-diagrams-with-rxnlvl
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GitHubからPythonで作られたエネルギーダイアグラム用のスクリプト(PyEnergyDiagramsrxnlvl)がダウンロードできます。Pythonをあまり詳しく知らない方でも、既存のスクリプトを使用すれば数値を変更するだけなので比較的簡単だと思います。


エネルギーダイアグラムを最も簡単に作成するには?

表計算ソフトで図形を使う方法は面倒ですし、グラフの数値がどうしても目分量になってしまいます。また、Pythonなどプログラミング言語を扱えない場合どうしたら良いのでしょうか?そんな時に役立つ方法が「EUTACTIC」で紹介されています。
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この方法を使えば、上図のようなエネルギーダイアグラムを表計算ソフトのグラフ機能で描画できます。もちろん数値を入力するだけで自動でグラフを更新してくれます。かなりシンプルかつ便利なので是非試してみてください。


簡単なエネルギーダイアグラムの作り方は?

EUTACTIC」で紹介されているこの便利な方法、作り方があまり詳しく書かれていないのでここで補足説明します。記事の一番下に作成したファイルをダウンロードできるようにしているので、参考にしてください。

1) 方法は、メインとなる散布図を作成して、色違いの水平線を描画させるためにダミー値と組み合わせて図を作成します。まずは、赤枠①のような表を準備します。例えば、水平線部分はAとA'のように同じ数値である必要があります。
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水平線部分と斜線部分を色分けするために、水平線部分のダミー値を用意します(赤枠②)。ここでは、水平線部分が5つあるので5つ用意します。D列の青字はC列セルに入力している参照値を説明のため記載しています。


2) 赤枠①の表を図に変換します。ここでは、散布図を選びましょう。
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あとはデータの追加からダミー1~5を図に追加していきます。
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3) 最後に、お好みでダミー値以外を点線にして水平線部(ダミー値)を黒の実線にしたり、余分な値や補助線を消したりすれば完成です。あとは、赤枠①の表中で青色に反転しているセルに値を入力するとグラフが更新されます。
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活性化自由エネルギーを計算してみよう」で紹介したExcelシートにもここで作成した可変式のエネルギーダイアグラムを貼ってみました。数値が変わるごとに、エネルギー図を書き換える手間が省けるので重宝すると思います。
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構造式はPNG形式がおすすめ

もう一つ、エネルギーダイアグラムに欠かすことができないのが、化学構造式でしょう。ただし、分子描画ソフトで作成した分子をそのまま貼り付けると背景の色まで写り込んでしまうため、どうしても見栄えが悪いです。
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そこでおすすめしたいのが背景を含まないPNG形式の画像を使用する方法です。既に「IRC計算の結果をグラフ化してみよう」の記事で紹介しましたが、Avogadroを使うと3D構造を背景画像なしのPNGで保存できます。保存方法については記事を参考にしてみてください。

おわりに

今回はエネルギーダイアグラムを作成する方法について紹介しました。正直、表計算ソフトのグラフ化機能を上手く使ったこの方法「この手があったか!!」と感心しました。また、時間がある方はPythonを使った方法についても是非チャレンジしてみてください。Pythonを使えるようになると、他にもOutputファイルから目的のデータを抽出したりとかなり便利です。Pythonに限らず、プログラム言語を扱えるようになると作業の省力化に貢献します。Pythonは日本語の説明も豊富ですし、比較的優しい言語ですので興味がある方は、少し学んでみると面白いかもしれません。

この記事で使用した計算ファイルを以下に置いておきます。
http://pc-chem-basics.blog.jp/Energy%20Level%20Diagrams.xlsx



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