量子化学計算では『理論/基底関数』の他に、『電子配置(基底配置)』、『スピン多重度』、『電荷』を指定する必要があります。今回は、『電子配置(基底配置)』についての説明です。
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各種GUIソフトの設定画面には、『RHF』、『UHF』、『ROHF』と出てきますが、違いは何なのでしょうか?

閉殻系にはRHF、開殻系にはUHF, ROHF

量子化学計算では、計算する化合物が開殻モデル閉殻モデルなのかを指定する必要があります。間違ったモデルを指定すると計算結果が大きく違ったり、エラーが出力される場合があるので注意が必要です。

  閉殻電子系にはRHF法
電子配置は軌道エネルギーの低い分子軌道から順に電子を2個ずつ詰めていきます(フントの規則)。電子が偶数個で、すべての軌道に電子が2個ずつ詰まる場合、上向きのスピンと下向きのスピン(αとβ)が対を成して入るような場合を閉殻系と言います。閉殻モデルを指定する場合、両スピンが対を成して入るように計算の手続きを制限していることから『制限ハートリー・フォック法(RHF) 』と呼ばれます。


 ■ 開殻電子系には、UHF法かROHF法
一方、電子が奇数個や片方のスピン電子数がもう片方のスピン電子数を上回る場合などを殻系と言います。
開殻モデルを指定する場合は2通りあり、各スピンに対して異なる軌道を定める自由度を許す場合は『非制限ハートリー・フォック法(UHF)』、同一の軌道に制限する場合は『制限開殻ハートリー・フォック法(ROHF)』を使用します。

この図をみてザックリとイメージを掴んでください。

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具体的にどう選べばイイの?

では、具体的にどういった化合物に対してRHFやUHF, ROHFを使い分けたらいいのかをここで紹介します。
 

■ 一般的な中性分子(基底一重項)であれば閉殻系のRHFを指定します。

■ 一方、イオンや励起状態、ラジカル、外殻に2つ以上の不対電子を持つなどの特異な系、RHFで不正確な結果が出力される系などは開殻系のUHF, ROHFを指定します。

■ ROHFとUHFでは、同一の軌道に制限を課しているROHFの方がUHFより高いエネルギー値を示す傾向にあります。UHFではスピン対称性のずれが大きい場合、特にSpin-Contamination(スピン混入)という誤差に注意が必要です。一般的にROHFの方が計算時間を要しますのでUHFでおかしな値が出た場合に、ROHFでリトライすることなどがあります。
 

おわりに

今回は、電子配置(基底配置)について閉殻電子系にはRHF法を、開殻電子系には、UHF法かROHF法を指定することを述べました。ちなみに以前、HF/3-21Gレベルで水の構造最適化計算を行いました。ここではRHF法を用いていますので、正式にはRHF/3-21Gと書きます(殆どの場合、Rは省略されていることが多いです)。もしUHF法を用いた場合はUHF/3-21Gと書く必要があるので、今後覚えておくと良いでしょう(ROHFならROHF/3-21Gになります)。
直接GAMESSのInputファイルで電子配置を指定したい方はこちらの記事を参考にしてください。

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