量子化学計算では分子全体の『電荷』と『スピン多重度』を指定する必要があります。前回、『電子配置(基底配置)』のRHFやUHFの違いについて述べました。あとは、電荷とスピン多重度の指定方法がわかれば、ある程度自由に計算ができるようになると思います。
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特にスピン多重度は、初心者が量子化学計算をする上で最も間違えやすい部分なので気をつけてください。

スピン多重度とは

スピン量子数はαとβ電子でそれぞれ+1/2と-1/2のスピン量子数をもちます。スピン多重度Nは、αとβ電子数の差2S(Sは分子の全スピン)を用いて、N=2S+1で定義されます。

つまり、一般の不対電子を持たないような化合物であれば電子数の差は0なのでN=1となり一重項となります。例えば電子が励起しα電子が2つ(同じ方向のスピンをもった2個の不対電子)になった場合S=1になるのでN=3、つまり三重項になります。

例えば、MoCalc2012を使用する場合、Firfly用の設定画面で『Spin State』の項目を一重項ならSinglet、二重項ならDoublet、三重項ならTripletと指定します。
 

計算で指定する電荷について

量子化学計算では、分子全体の総電荷を指定する必要があるので注意が必要です。例えば、一価の陽イオン+1なら『1』、陰イオン-1なら『-1』、一価の陽イオンと陰イオンが混在する場合は(+1+(-1)=0)で『0』と指定します。

例えば、MoCalc2012の場合、Firfly用の設定画面を開き『Charge』の項目で電荷の指定ができます。また、MoCalc2012では使用した分子構造ファイル(MOLファイルなど)を基準として電荷の値を自動選択しますので、変更の必要がある時に設定をしてください。
 

具体的にどう選べばいいの?

スピン多重度は初心者にとって少し難しいかもしれません。そこで、具体的な例とスピン多重度の対応表を作ってみたので参考にしてください。
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おわりに

今回は、スピン多重度が2S+1の式で定義されること。計算で指定する電荷は分子全体の総電荷であることを述べました。
これで、量子化学計算で必要な『理論/基底関数』、『電子配置(基底配置)』、『スピン多重度』、『電荷』の指定方法がわかりました。
理論/基底関数の適切な選択方法についてはもう少し詳しく知る必要がありますが、今後、実際の計算を『体験』することで、自由自在に扱えるようになりましょう。
直接GAMESSのInputファイルでスピン多重度や電荷を指定したい方はこちらの記事を参考にしてください。

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