GAMESS (General Atomic and Molecular Electronic Structure System)は、非経験的分子軌道法の計算パッケージです。1977年発足の「National Resources for Computations in Chemistry project」というプロジェクトを元に、現在はGAMESS(US), Firefly(PC GAMESS), GAMESS(UK)とにプロジェクトが別れています。
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今回は、GAMESS(US)とFirefly(PC GAMESS)の違いについて簡単に紹介します。今後、GAMESS(US)の導入方法を紹介しますので、この記事を読んで実際に導入するか検討してみてください(Fireflyの導入方法はこちら)。
なお記事作成時の各バージョンは、GAMESS(US)Ver.Aug 18, 2016とFirefly Ver.8.2.0です。

1) GAMESS(US)について

 ■ 開発
GAMESS(US)は、アイオワ州立大学のGordon研究グループのメンバーによって保守されています。
gamess
 ■ 呼称
GAMSS(ゲームス)と呼ばれるときは、一般的にGAMESS(US)を指すことが多いです。
また、Windows版はWINGAMESSと呼ばれたりもします。
 
 ■ バージョン
Aug 18, 2016」のように数字ではなく日付で表記されます。大幅な変更も、小さなバグ修正であっても区別なく日付での表記になります。

各バージョンンの変更履歴はこちらから確認してください。
http://www.msg.ameslab.gov/gamess/versions.html
 
 ■ 特徴的な機能 (Fireflyとの相違点)
Fireflyにない特徴的な機能としては、フラグメント分子軌道法(FMO), Coupled-Cluster法による電子相関補正, NMRの遮蔽定数計算などが挙げられます。
FMOは、系全体を小さなフラグメントに分割し、全電子計算を行います。小さな計算を複数回実行するだけなので、巨大な系を扱う際に計算コストを大きく減らすことが可能です。
CC法は、HF法を基に電子相関を考慮する演算子を用いて分子軌道計算を行います。計算コストの割に比較的良い結果を示すことが知られています。
NMRの遮蔽定数計算はかなりのマシンパワーを要するので、家庭用パソコンで挑むのは少し難しいでしょう。 商用のGaussianと比べても数10倍以上時間がかかるので、おまけ程度といった印象です。 最近は、実験データからNMRシフトを予測するソフトも優秀になってきていますので、本格的な学術用途以外で使用するメリットは低いと考えます。
NMRスペクトルの計算方法についてはこの記事を参照してみてください。
http://pc-chem-basics.blog.jp/archives/1921884.html

細かい違いを上げればキリがないので、ここでは実用面を考えて代表的なものを挙げてみました。Fireflyに比べ新しい計算手法(機能)が搭載されるのが早いので、 Fireflyに搭載されていない機能を利用したい場合におすすめします

2) Firefly(PC GAMESS)について

 ■ 開発
Firefly(PC GAMESS)はモスクワ大学のGranovsky研究グループのメンバーによって保守されています。
firefly-invisible
 ■ 呼称
Firefly(ファイヤーフライ)、旧名PC GAMESS(~2009年)。未だにPC GAMESSで呼ばれることも多いので、Firefly(PC GAMESS)と記載されることが多いです。
 
 ■ バージョン
8.2.0」のように3桁の「A.B.C」形式で表記されます。GAMESS(US)と異なり日付ではなく数字表記です。

A.B.Cの数字の意味は以下の通りです。
A=メジャーバージョン: 大幅な変更
B=マイナーバージョン: メジャーバージョンほどの変更はないが、追加機能などがある場合
C=メンテナンスバージョン: バグなどの不具合修正や軽微な変更がある場合

各バージョンンの変更履歴はこちらから確認してください。
http://classic.chem.msu.su/gran/gamess/history.html
 
 ■ 特徴的な機能 (GAMESS(US)との相違点)
GAMESS(US) (Ver. October 25, 1999)までの機能はすべてカバーしています。それ以降はGAMESS(US)を元に独自の拡張がされたため、現行バージョンではGAMESS(US)のレガシーコード(変更が困難なコード)を除く95%以上が書き換えられています。
GAMESS(US)との一番の違いは、何と言っても計算速度です(ベンチマークはこちら)。 GAMESS(US)と比較してintel CPUを用いたSMP(マルチプロセッシング)が最適化されているため、かなり高速です。
特に、DFT計算はGAMESS(US)より圧倒的に高速です。また、励起状態のRPA(TDHF)とTDFTなどもサポートしています。他の機能としては、メラー=プレセット法にMP2以外のMP3, MP4を実装していることや、ポテンシャル曲面の計算(RSURFACE)が可能なことなどが挙げられます。

GAMESS(US)と比べ機能面での充実度は劣りますが、その計算速度は非常に魅力的です。更新毎に、機能面よりも速度を追求している印象を受けます。特別な計算目的がなければ、計算速度で優位なFireflyがおすすめです

3) おわりに

今回は、Firefly(PC GAMESS)とGAMESS(US)の違いについて、特徴的な機能に焦点をあてて比較してみました。
GAMESS(UK)についてはまったく触れませんでしたが、1981年のプロジェクト分岐以来かなりその内容は異なっています。GAMESS(US)とFireflyは、現在も入出力ファイルの互換性は概ね保たれていますが、GAMESS(UK)はそれすらもまったく別物です。また、英国の学術機関は無償で使用できますが、英国以外のユーザーや企業は有償です。興味がある方は、HPを参照してみてください。

【関連記事】
Firefly(PC GAMESS) の入手とインストール方法 ~その①~
Firefly(PC GAMESS) の入手とインストール方法 ~その②~
GAMESS(US)の入手とインストール方法