Chem Tube3Dは本来、量子化学計算のデータベースではありません。しかし、基本的な有機化学反応の遷移構造が多数掲載されています。
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面倒な登録もありませんし、無料で利用できます。これまで紹介してきたデータベースとは性質が異なりますがこれを利用しない手はありません。早速、使い方を見ていきましょう。
 

1) どんなデータが利用できるの?

ChemTube3Dリヴァプール大学のNick Greeves博士を中心としたプロジェクトチームが運営しており、国際的にも非常に利用者が多いオープン教育リソースです。Nick Greeves博士はこの功績で、2015年にRSC Nyholm教育賞を受賞されています。
具体的には、有機化学反応における重要な反応や構造がインタラクティブな3Dアニメーションで表示させることができます。ビューアはオープンソースのJSmolを使用しており、Javaなしで動作するようにコード化されているため、タブレットやスマートフォンでも動作します
掲載されている3Dモデルは、Spartan, GAMESS, Firefly(PC GAMESS)等で構造最適化や遷移構造の探索がなされています。具体的にどのような理論/基底関数で計算されたかは記載されていませんが、幾つかの遷移構造をダウンロードしてFirefly(PC GAMESS)のHF/6-31+G(d,p)レベルで遷移構造探索をすると、いずれも速やかに収束したので初期構造として十分利用できると思います。

2) 利用方法は?

そもそも、計算した構造をユーザーが取得するように作られていないので、これらをダウンロードして他のソフトで利用するのに少し手間がかかります。ここでは典型的な二分子的求核置換反応(SN2)の遷移構造の取得について説明します。構造ファイルの入手方法を動画に纏めてみました。詳細な手順は本文で確認してください。


1) ChemTube3Dトップページにアクセスし。Organic Reactions(下図の赤丸で囲った部分)をクリックします。
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2)サイドバーのNucleophilic substitutionからSinmple SN2 reactionを選択します(赤枠①)。次にTransition Stateを押すと、遷移状態が描画されます(赤枠②)。
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3) JSMOLの3Dモデルを右クリックし「ファイル >保存する >(ファイル名).xyzのコピーを保存」で選択するとファイルが保存できます。保存したxyzファイルには、反応前の構造から反応終了までの一連の構造が含まれるので遷移状態が何番目のモデルであるか確認する必要があります。ここでは21あるうちの11番目が遷移構造であることがわかります(青枠で囲った部分より)。
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4) 保存したファイルをテキストエディッタで開き、11番目の座標を抜きだします。赤枠で囲った部分以外を全て削除し、ファイルを上書き保存してください。
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5) 試しにAvogadroで開いてみた様子が下図になります。実際にこの遷移構造を利用した反応解析については、今後詳しく説明します。
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3) おわりに

今回は、Chem Tube3Dについて紹介しました。本来の目的とは異なり、裏技的に遷移構造を取得するこの方法は、他のサイトなどでも利用できるので覚えておくと良いでしょう。
また、面白い機能としてここで掲載されている構造は3Dプリンターで印刷することも可能です。
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.stlと.x3d形式ファイルをダウンロードすれば、DMM.makeなどの国内サービスでも出力可能なようです。これは、かなり面白そうですね。
今後も、引き続き量子化学計算に関するデータベースを紹介していきます。

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遷移状態を求めよう!!その①~入門編~
遷移状態を求めよう!!その②~実践編~